コロナ禍における購買及び行動情報のデータ分析

はじめに

 世界中に広まっているコロナウイルスの影響は甚大で、日本も大きな影響を受け、人々の行動は大幅に変わってきています。例えば、企業や大学は仕事や授業をリモートで行うことを推進し、人々が野外での活動を自粛するなど、今までにない流れが生じています。こうした困難な状況に対する対策案として、消費者行動の傾向などを把握するためにデータ分析が有効的です。しかし、このような人々の行動の変化を一元化してデータ分析をするのは難しく、全体的な傾向が掴めるとは限りません。そこで、全体を一定の条件下で複数グループに分割しそれぞれをデータ分析、それらのグループごとの傾向を掴むという分析方法が推奨されます。この手法を使ってコロナ関連データと購買・行動データを分析した事例をご紹介致します。

ターゲティングプロモーション施策

 ターゲティングプロモーションとはなんでしょうか。
プロモーションとは、消費者の購買意欲を煽り、購買行動を増やすこと、つまり広告です。この広告を任意のターゲットに絞って打つことがターゲティングプロモーションになります。不特定多数に広告を打つよりも、ターゲットを絞って広告を打つことで、コスト削減ができる上に、費用対効果も期待できます。コロナ禍におけるデータ分析においては、コロナ関連データと、各企業の自社データを組み合わせて分析を行うことが効果的です。例えば、購買行動などの消費者行動データから、各企業の自社顧客全体とコロナ関連のデータとの間には関連性を見出すことは難しいですが、影響度合いの多い層と少ない層という切り口で顧客セグメンテーションを行い、データ分析を進めていくことで解決することが可能となります。
 次の章で、いくつかの顧客に対してターゲティングプロモーション施策を展開する事例をご紹介します。ここでは、各顧客の顧客購買行動データとコロナウイルスの感染者データを組み合わせてデータ分析をし、コロナ禍において特定の顧客たちの購買行動がいかに変化したのかを見ていきます。

クライアント1:スーパーマーケット

 データ分析内容

 自宅から店舗までの距離が遠い高齢層を中心に利用客数と新規感染者数に負の相関が見られました。つまり、新規感染者数が増えれば増えるほど、スーパーマーケットの利用者が減っているということです。これは、新規感染者が増えると感染への危機感が生じ、わざわざ遠出して買い物をしないようにするからと考えられます。
 また、新規感染者の増加に合わせて各地名産品の売り上げが増加しています。これは、旅行や外食をする機会が減り、自宅で食事をする機会が増えたため、ちょっとした贅沢をする需要が高まったからと考えられます。

施策内容

 前者の購買行動をする顧客に対しては店舗にあまり足を運ばなくなった特定の層にオンラインサイト活用推進のDMを送るなどの対策ができそうですが、高齢層にオンラインサイトを勧めるよりも、紙媒体などのチラシを送る方が、より受け手のニーズに沿った形でサービスを提供できます。
 また、後者の購買行動をする顧客に対しては、今後の感染者数予測に応じてトレンドキーワードから、各地名産品をチラシに掲載などすることで売上増加の施策を打つことが可能となります。

クライアント2:ホームセンター

データ分析内容

 コロナウイルス感染拡大の第二波以降、高齢者におけるペット需要が増加しています。これは、孫や家族に会えなくなった層がペットを飼い始めている可能性が示唆されます。

打ち手/施策展開

 上記の傾向より、対象となる高齢層に対して需要喚起の DM を送ることができますが、高齢者へのDM送付 の方法については考える必要があります。メールを送るよりチラシを家に送るなど、より受け手に沿った方法を取ったほうが良いかもしれません。

クライアント3:コスメショップ

データ分析内容

 百貨店への来店が劇的に減った層のプロファイリングを通して、どのような購買行動傾向、属性なのか、また利用が減らない層との比較から来店が減った要因を解明する事ができます。要因を解明していく際、仮説を立て、それを検証していくことが重要で、闇雲にデータ分析を進めるのではなく、仮説からシナリオを作成の上、分析の筋道を立てていくほうが、円滑なデータ分析が可能です。

施策内容

 上記方法で分かった購買行動傾向の原因をもとに施策を展開していきます。例えば、来店が減少した特定の顧客に対してDMによりオンライン購入を促したり、カタログ通販による需要喚起を行うことができます。

まとめ

 このように、クライアントの中でもそれぞれの層によって購買行動は変わってきます。どのようにしてターゲットを分割するか、そのターゲットからはどういったことが見えてくるかが非常に重要となります。特にこのコロナ禍においては、人々の新しい消費者行動が見られます。例えば、高齢層がペットを飼い始める傾向にある、などもデータ分析をしない限りは見えてこない、思いがけない消費者行動の一つだと言えます。正しくデータ分析をし、正しい施策を考えることが大切になります。基本的に、コロナ禍における施策は店舗に行く必要のないものになると思われます。オンラインやDM、カタログ購入などが、当てはまります。そもそも EC サイトを持っていない場合は、サイト運営から始めるのも良案で、それぞれの購買行動にあった対策をしていくことが重要です。

コロナ関連イベントと行動変化の関係

 次に、コロナ関連のイベントによる消費者行動の変化を見ていきます。日本全国における新規感染者数や死亡者数に対して、政府によるイベントや政策を重ねることで、政府の意思決定背景や、政策における問題点などを振り返ることができます。ここで言う政策やイベントとは、緊急事態宣言やGoToトラベルなどのコロナ禍ゆえになされたものを示します。また、消費者行動データとしてGoogleが提供するコミュニティモビリティレポートを用いて、場所という観点から消費者行動データをグループ分けし、それぞれをデータ分析して傾向を調べます。

コミュニティモビリティレポート

 先述したコミュニティモビリティレポートを図1に示します。こちらは、Google が提供するもので、新型コロナウイルス感染症への対応を考える中、Google マップなどのサービスに使用されているような情報を基に作成された消費者行動データです。コロナ前の曜日別の行動者数を基準として、各施設カテゴリへの移動量の変化量を日毎に取得して、一般的な行動量に対する比を表したデータです。今回はこちらを消費者行動データとして扱います。

図1

コロナ関連イベントの消費者行動の変化への影響

 上記コミュニティモビリティレポートを基にイベント毎の消費者行動の変化量を図2にまとめました。これを基に日本のコロナ対策や施策のタイミングでの平均的な移動傾向(期間平均)を確認した結果、第1回緊急事態宣言では全体的に消費者行動は少なく巣ごもりが多い状況であることがわかります。特に、公共交通機関においては消費者行動量が通常よりも半分近く減っています。それに比べて、第2回緊急事態宣言では、消費者行動の規制がやや緩くなっていることが読み取れます。第1回緊急事態宣言時には半分ほど減少していた公共交通機関の消費者行動量が、三分の一ほどの減少になっており、1回目に比べて2回目の方が、危機感が薄れているということです。はじめは、情報が全くなくただただ怖かったコロナウイルスに関しての情報が増え、対策の仕方もある程度分かってきたためだと思われます。

図2

 週毎の変化を追跡できるよう、曜日別基準値は変化しません。また、曜日別基準値では季節性も考慮されていません。例えば、通常、天気が良くなると公園の訪問者数は増えます。ここでの公園とは、正式な国立公園を意味し、地方にある一般的な屋外施設のことではありません。そして、庭園、城、国有林、キャンプ場、展望台などを含みます。また、公共交通機関には地下鉄駅、海港、タクシー乗り場、サービスエリア、レンタカー代理店などを含みます。

期間別、感染者数と行動者数の散布図

図3 コロナウイルス感染拡大の全期間

 続いて、コロナウイルス感染拡大の全期間における新規感染者数と行動者数の変化率を散布図にしました。横軸が新規感染者数で、縦軸が行動者数の変化率です。この散布図を一見すると、全期間では、この二つの数値には全く関係ないように見えます。そこで、全期間から一部を切り出してみたいと思います。切り出す期間としては、第 1 回緊急事態宣言後と第 2 回緊急事態宣言中の二つにします。それぞれの期間において、新規感染者数と行動者数の変化率に関係があるのか否か、また、その関係からはどういったことが見えてくるのか検証します。

図4 第1回緊急事態宣言後

 まずは、第1回緊急事態宣言後の新規感染者数と行動者数の変化率の散布図です。この散布図を見ると、緊急事態宣言が明けた後には交通機関や小売、職場の移動が回復してくる一方で感染者が増えてくることがわかります。第1回緊急事態宣言中はなるべく外出を控えて自宅にいた人たちも、宣言が解けると同時に外出しているようです。特に職場と公共交通機関は似たような形になっていますが、これは職場に行くために公共交通機関を利用する人が多いため必然な流れと想定できます。

図5 第2回緊急対宣言中

 次に、第 2 回緊急事態宣言中の散布図です。今回もまた、横軸に新規感染者数、縦軸に行動者数の変化率をとった散布図です。先のものと違い、宣言が明けた後ではなく、宣言の最中のデータになります。これを見ると、第 2 回緊急事態宣言中において小売や食料品店関連は感染者数の増加に対して、行動者の数は減るという線形な関係を読み取ることができます。緊急事態宣言中だと、生活必需品を買うための行動も普段より抑えられているようです。もしかすると、オンラインショッピングに移行しているのかもしれません。

まとめ

 このように、コロナに加えて政府の施策など複合的な要因の中で消費者行動の動きを捉えることが可能です。しかし、そのデータ分析は一筋縄にいくとは限らず、全期間、国全体では全く傾向の掴めないものも、期間毎、場所毎に分けることによって傾向が見えてくることがあります。今回は、一度目の緊急事態宣言と二度目の緊急事態宣言を抽出しましたが、それぞれ宣言後と宣言中という違いによりまた動きが変わってきます。宣言中はやはり消費者行動は自粛される傾向にありますが、宣言期間が明けると消費者行動が増える傾向にあります。しかし、その増減も場所によって異なり、傾向が少し変わります。闇雲に全てのデータ分析を一度にするのではなく、グループごとに分割して、それぞれをデータ分析することの重要性を再認識する事ができました。

これからのコロナ時代の需要予測

 これからのコロナ時代は今までと異なり、コロナ時代によって見えてきたものやコロナ時代だからこその条件等を全て複合的に考えることが重要になります。一年前の情報が何もなかった時とは違い、データが蓄積され傾向などがある程度わかってきた上で、どの様なアプローチが必要になるのかを見ていきましょう。

  1. コロナ感染状況が緩和した後、インバウンド需要がどうなるのか。つまり外国からの日本に入る需要はどうなるのか、などのシナリオパターンを踏まえた予測と施策準備をします。
  2. 先程の例のような政策影響だけでなく、季節性や天候も複合的に考慮した予測が必要になります。
  3. 休業や時短営業、セールなどがそれぞれ商品に与える影響を商品毎に確認します。
  4. 上記 1 から 3 を踏まえてデータとして予測分析に用いる期間と捨てる期間の精査をします。
  5. 同一の顧客のコロナ前後における消費者行動の変化を把握し、消費者のニーズ変化を捉え、顧客の先回りをすることも重要になります。

全体のまとめ

 今回は、コロナウイルス感染者数データと消費者の購買・行動データを組み合わせることによって、傾向を掴む分析を紹介しました。しかし、全体の傾向のみを掴もうとするのではなく、データをグループに分け、それぞれの傾向を掴みました。傾向を掴んだ後は、考察です。なぜその結果が生まれたのか、その結果をもとにどういった対策や施策が必要となるのか、今までがこうであったのならこれからはどうすべきなのか、次にとるべき行動を考えなければいけません。データ分析は、過去の結果から未来を予測し、次の行動を考えるものです。特にコロナ禍においては、コロナ関連データと他のデータを組み合わせて分析することが効果的です。コロナウイルスが感染拡大し始めた頃は不安だらけでしたが、今はそれもやわらいできました。これもデータが蓄積されたおかげです。これからは、このコロナ禍を利用する番です。今のこの状況は、いずれ終わりがきます。コロナ禍の傾向は、今しか利用できません。そのために必要なのは、やはりデータ分析です。データ分析によって得られた知見を最大限に活かすことが重要になるでしょう。

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